シリコンバレーバンク破綻の影響考察
米国地銀シリコンバレー銀行(SVB)から始まった金融不安はスイスの大手クレディスイスに広がりました。しかしながら、米国・スイス当局の迅速な対応に反応し、取り敢えず金融不安から一時的に回復したと市場は評価。
またFRBはFOMC で、予想通り0.25%の政策金利上げを決定しましたが、
SVBが破綻する前は0.5%アップが濃厚と言われていたので、このタイミングを機に株式市場の景色も変わってきたこととなります。
クレディスイスの話は、タイミングよくなかったです。
元々昨年時点で赤字決済も出ており、元々この話はいつ出てもおかしくない状況でした。それがSVB破綻後にこの騒動が出たので、世界的に大丈夫と言う雰囲気になりました。
冒頭に述べたようにクレディスイスについては3/19、スイス金融当局がUBSのクレディスイス買収・救済されました。
ただそこでの救済策の中で、クレディスイス発行のAT1債※を無価値にされました。
この最大の問題は、本来であれば銀行が破綻した場合、株式よりも守られている筈のAT1債という債券が先に価値ゼロの紙切れ宣言されたことです。
※AT1債とは、大雑把に説明しますと、リーマンショック後、金融機関の財務の安定化を狙うために作られた実は投資家には危険な金融商品です。
形式は債券ですが、一定の期間後にお金を投資家に返済する義務がない債券(永遠債)です。
AT1債は、自己資本を増強したい金融機関の発行が増えていました。但し、一定条件が揃えば元本割れするリスクがあるとともに、利払いも発行側の裁量で止められることがあるのです。更にある一定条件に引っかかると株式に転換されることになります。
→AT1債はもうすこす勉強してから内容を書き起こしたいと思います。
結構深い。
最近、ヘッジファンドがこの紙切れとなったAI債を二束三文で買い占めている動きが出ています。無効化されたことに対する訴訟でこの株式と債券の優劣逆転が違法と判断され、AT1債の急騰することを狙った取引だと思われます。
そして更なる問題はドイツ銀行の再建計画の中で、自己資本比率を13.8%にするために、このAT1債をドイツ銀行が巨額発行していることです。
もし、欧州で経営不安の銀行が今後出てきた際、そしてもしその銀行がAT1債を多額発行している銀行であったら、それを理由に更なる経営不安につながるリスクが発生します。
意地悪的に言えば、AT1債を発行している銀行を狙って、ヘッジファンドが株式の空売りやクレジットデフォルトスワップ( CDS )の空売りを仕掛けてくる可能性も否めません。
つまり、現在やや鎮静化されたと思われる金融不安はまだこれから深まる可能性が高まるのです。少なくともAT1債の価値が今後、無価値から株式よりも優先される債券として評価されようになるまでは市場は不安定が続くと思われます。
ということで、今後の市場でのAT1債の動きに特に注目する必要があります。